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歌う俳優・菅田将暉が演じる、ロックスターたちの肖像。

俳優として飛ぶ鳥を落とす勢いのさなか、シンガーデビューを果たして世間を驚かせた菅田将暉が誰もが知る“アイコン”となったロックスターたちを演じた。音楽が菅田将暉という人にとって、果たす役割。彼がロックだなと感じる歌い手、今後の音楽活動......そんな音楽にまつわる話だけ、語ってもらいました。 菅田将暉が伝説のロックスターを演じた5枚のポートレイトすべては『VOGUE JAPAN』2017年10月号でチェックして。
セックス・ピストルズの2代目ベーシスト、シド・ヴィシャスは薬物の過剰摂取で21歳で急逝するも、パンクシーンのアイコンとして今も輝きを失わない。ジャケット 参考商品 ボールチェーンネックレス $92.00/ともにHOMME BOY(hommeboy.com) レオパードシャツ ¥5,800(ヴィンテージ)/LABORATORY / BERBERJIN®(ラボラトリー / ベルベルジン®) レザーチョーカー ¥30,000/AMBUSH®(アンブッシュ®ワークショップ)

セックス・ピストルズのシド・ヴィシャス、女性ロックミュージシャンの先駆者として知られるパティ・スミス、グラムロックの寵児デヴィッド・ボウイ、グランジ・ムーブメントの火付け役となったカート・コバーン、ブリットポップの立役者オアシス─。今回の撮影で、「歌う俳優」菅田将暉さんにイメージしてもらったのは、音楽シーンを強烈な個性と唯一無二のサウンドで彩った5人のアーティストたち。今年はシンガーデビューをはたし、間もなくセカンドシングル『呼吸』がリリースされる菅田さんにとって、音楽とは一体どのようなツールなのだろう?

──デビューシングル「見たこともない景色」のジャケットはチャック・ベリーを意識したそうですが、5人のアーティストになりきる本日の撮影はどうでしたか?

「見たこともない景色」のカップリングで、「ばかになっちゃったのかな」という曲があるんですけど、これが男の叫びなんだけど縦ノリじゃなく、ちょっと横ノリが漂う感じなんです。その辺りの感覚をつかむために、オアシスを参考にしたかったので、一時期オアシスばかりを聴いていた。今日はそんなことを思い出していました。

──しっくりきたスタイルとそうでないスタイルはありましたか?

それが不思議な話、どれも自分とそう遠くないんです。やっていてすごく楽しかったですし。そして改めてロックスターと言われる人たちは本当にカッコよかったんだなあ、と思いました。誰かに言われるのではなく、自分たちの思うままに、感性で音楽もスタイルも確立していたと思うと、本当に「すごい!」のひと言です。

─菅田さんもセカンドシングルは自ら歌詞を書いていますよね。

言葉も自分で書いたほうがしっくりくるし、本来だったら音階やメロディも、自分にとって気持ちがいいところ、というのがあるんです。今回の『呼吸』という曲はメロディ先行で歌詞を当てていったので、メロディにはめていく楽しさというか、ルールの中でのはしゃぎ方というのがすごく面白かったんですけど、どうしたって自分の言葉だとぴったりとははまらなくて。それはそれで楽しいけど、今度はメロディのほうも作ってみたいなと、自分の中でどんどん求めてしまうんですよね。

「ジギー・スターダスト」時代の華麗なヘアメイクとファッションでグラムロックを代表するミュージシャンとなったデヴィッド・ボウイ。昨年世を去り、遺作となった『★ (Blackstar)』は今年のグラミー賞で最多の5 部門を受賞した。ジャンプスーツ ¥272,000/CHARLES JEFFREY(ザ フォーアイド) ブローチ ¥1,000(ヴィンテージ)/ THE FOUR-EYED(ザ フォーアイド) その他スタイリスト私物

──じゃあゆくゆくは自分の世界を表現する音楽というものを作っていきたい? どうなんでしょうか。

まだ始めたばかりで赤ちゃんみたいなものなので、楽しそうなモノのほうにハイハイして寄っていき、ワイワイやっているような感じですからね。自我みたいなものはこれからもっと出てくるんだと思います。ただ確かに少なからずですが、そういう欲はある気がしています。

──初ライヴもされていましたが。

ライヴってすごくわがままな空間なんですよね。なんかわからないけど、一瞬でも空気が一つになる感じというのがすごく新鮮でした。それが、自分が作ったモノだったりするとなおさら、より忘れられない空間になるんだろうな、という気がしました。

──ちなみに今はどんなアーティストの曲を聴いているんですか?

本当におとついくらいに初めて長澤知之君の曲をちゃんと聴いたんですけど、これがすごい衝撃的で。僕はこれまでエモーショナルな曲が好きで、なんでこの人はこんなに悔しそうなんだろう、悲しそうなんだろうとか、そういう感情を吐き出す青春パンクやフォークロックみたいな、ただただ泥臭いものを地で表現している感じの歌やミュージシャンへの憧れが強かったんです。それが長澤知之君に関して言えば、エモーショナルさもありながらハンパない技術があって、声のうわずりや高音を出したときの喉のつっかえる感じとかも、多分狙ってやっているんだろうな、という感じなんですよ。狙うと言っても、「ここでうわずろう」というわけではなく、ある部分でわざと感情を強く押し出すと、自然とそうなるということなんでしょうけど。そういうところがどこか職人っぽいというか、ものすごくアートでしびれたんですよね。表現するって自由なんだぁ、いいなぁって。

──ロックスターと聞いてイメージする人や言葉は?

キヨシロー(忌野清志郎)ですね。ザ・ロックスター! という感じがします。洋楽も好きですが、やっぱり英語だと歌詞の意味が全部わかるわけじゃないので、ストレートに歌詞が入ってくる日本の歌を聴きがちではあります。でも今はイチからビートルズを聴き直していて、「Day Tripper」のギターリフなんかも練習しています。

──今後の音楽活動は、自然の流れに乗っていく感じですか?

いや、むしろ流れに逆らって、自分の流れをつくっていくという感じです。僕にとって音楽は表現の一つではあるけれど、なによりも楽しくないとやる意味がなくなってしまうから。

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菅田将暉(すだまさき)
1993年大阪府生まれ。2009年デビュー。13年の第37回日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ、多数の映画賞を受賞。17年「見たこともない景色」でCDデビュー。セカンドシングル「呼吸」が8月30日リリースに。また新作映画『あゝ、荒野』(前篇10月7日、後篇10月21日)『火花』(11月23日)も公開予定。

Photos: Monika Mogi Stylist: Keita Izuka Hair & Makeup: Azuma at Mondo Interview & Text: Rieko Shibazaki Editors: Yaka Matsumoto, Sakura Karugane