ティム・ウォーカーが描いた、現代版『不思議の国のアリス』とは?
1964年から始まり、ファッション業界でも毎年話題を呼ぶピレリカレンダー。過去にはハーブ・リッツ、ノーマン・パーキンソン、マリオ・テスティーノ、アニー・リボヴィッツ、そして、昨年はピーター・リンドバーグが起用されている。そして、2018年の写真家に選ばれたのは、ティム・ウォーカー。彼が起用された理由として、エグゼクティブ・ヴァイス・チェアマンのマルコ・トロンケッティ・プロヴェラは「今までとは違う革新的な“何か”を表現したかった。その時に、友人でもあった故イタリアン・ヴォーグのフランカ・ソッツァーニに、ティム・ウォーカーを起用して見たらどうか?と勧められたんだ」と語った。全員黒人キャストで描かれた『不思議の国のアリス』には、スーパーモデルのナオミ・キャンベル、今、ファッション界で人気急上昇中のモデルのアジョア・アドワ、女優のルピタ・ニョンゴ、そして、コメディアンであり女優、アクティビストのウーピー・ゴールドバーグなど豪華なメンバーで彩られた。スタイリストは、ブリティッシュ・ヴォーグの編集長でもあるエドワード・エニンフル、セットデザイナーは、長年ティム・ウォーカーの相棒でもあるショーナ・ヒース。NYでの発表会では、ショーナも来場し、ティムとの撮影秘話を語ってくれた。
ーーー黒人モデルを使うアイデアはどこから来たのですか?『不思議の国のアリス』に込められたメッセージとは?
黒人モデルたちを使ったのは、黒人モデルが社会でとても重要な役割を果たしていると思ったから。この物語では、アリスだけでなく様々なキャラクターが登場している。その様々なキャラクターが世界のダイバーシティを表現していて、それぞれのキャラクターが“カルチャーアイコン”なんだ。アクティベストにしても俳優にしても、モデルでも、素晴らしい才能を持った黒人はたくさんいるし、世の中の概念を破って彼らへの見方を変えたかった。フォトグラファーとして、今、そのメッセージを伝えることがとても大切だと思ったんだ。「everyone’s welcome!」とね。もちろん、僕の子供時代の思い出も大きく関わっているよ。子供から大人へ成長する世界をこの物語はうまく表現しているから惹かれたんだ。セットデザイナーのショーナ・ヒースやスタイリストとのエドワード・エニンフルとのコミュニケーションがとても重要だった。イラストレーターのジョン・テニエルのオリジナルのヴィジュアルにも立ち返って考えた。
ーーー『不思議の国のアリス』を題材としている、他の作品も見ましたか?
ティムバートンの作品?もちろんだよ。
ーー一番難しい役は、どの役だったと思いますか?
アリスの役は難しかったと思う。アリスを演じたダッキー・ソットは、とても強い魅力を持っていたけど、まだ20歳だからね。そして、ただ、モデルをすればいいだけじゃなく、アリスが何を見て感じて、冒険したのかを写真の中で表現しなければいけなかった。しかも有名で一流の人たちに囲まれながら。
ーーーピレリのカレンダープロジェクトについて。どのような印象を持っていましたか?
もちろんこのプロジェクトについては知っていたし、イノベーティブな写真家をサポートしてきている。私を選んでくれたことはとても名誉なこと。そこには責任が伴うからこそ、ポジティブなメッセージを発信したいと強く思ったんだ。皆きっと、今の世界の状況を見たら何か足りないか、欠けているかわかると思う。そして皆が今、本当に見たいと思っているものを表現するのには絶好の機会だと思ったよ。
ーーーどれくらい自由にできるのですか?
完全に自由を与えられている。これは、フォトグラファーへのギフトだね。
ーーーあなたにとって、美しさとは?
「美」を通して、とても大切なメッセージを発信することができる。45歳にして色々と気づいたんだ。私はいつも写真を撮ることを通して人々をセレブレイトするんだ。何を表現していようと、いつもそこにはセレブレーションが伴ってくる。個性だったり、その人が表すものだったりへの敬意を写真で表しているよ。
スーパーモデル、ナオミ・キャンベルにインタビュー。『不思議の国のアリス』に込めた願いは?そして、夢を叶える秘訣とは?
ーーーこのカレンダーに参加するのは4回目ですよね。
4回もこのピレリカレンダーに参加させてもらえことは、本当に光栄のこと。このタイミングで、このテーマを、ファンタジーの中で表現したことで、今回のカレンダーに込められたメッセージはいつも私たちの中にあったことを実感したわ。
ーーー今回、ミシェル・オバマにもオファーしたけど忙しくて断られたって話がありましたが。
彼女はとっても忙しいのよ!(笑)
ーーーあなたはおとぎ話を信じますか?
もちろん!
ーーー今回のプロジェクトではどんなメッセージを込めましたか?
世の中のダイバーシティ(多様化)をこのカレンダーを通して伝えられたら。ダイバーシティ、そしてみんな平等だということを。特に今は、そのことを声を大にしていうべきタイミングだと思う。今まで世の中の反応を恐れてできなかったこと、今までできなかったことをするチャンスが訪れたんだと思うわ。
ーーー今回のあなたが演じたキャラクターについて。今回の役はあなたに合ってたと思いますか?
そうね、私はとってもボッシー(Bossy)なタイプだからぴったりだったわ!
とてもはまり役だったと思う。とても楽しかったわ。
ーーー夢を持ってる女の子たちへ。夢を叶えるにはどうしたらいい?
SNSの存在によって、たくさんの若い女の子たちの夢は実現していると思うわ。携帯があるだけで、自分の才能を世の中に発信できるんだもの。だからこのカレンダーもそうよ。このカレンダーはとてもたくさんの人に希望と夢を与えると確信しているわ。たくさんの人たちにインスピレーションを与えると思う。
ーーーBritish VOGUEへの今後の関わり方は?
詳しくは答えられないけど、とても真剣に仕事をしているわ。私が生まれた国で新しいスタートに関われることは、とても光栄なことよ。