Interview with Masaharu Fukuyama, Musician & Actor

福山雅治の現在と『三度目の殺人』──インタビュアーの吉田豪が直撃!

福山雅治がデビューしてから27年、齢は48歳に達した。しかし、軽妙と深刻のあいだを往還する福山トークはいまも冴えわたる。プロ・インタビュアーの吉田豪との久しぶりのやりとりを楽しみながら、福山雅治がみずからの現在を語る。そして、最新の主演作『三度目の殺人』についても。 Photos: Kazumi Kurigami Hair & Make-up: Tomita Sato Styling: Hiromi Shintani Words: Go Yoshida
インタビュアーの吉田豪が直撃!──フクヤマの現在と『三度目の殺人』
ジャケット ¥480,000、シャツ ¥65,000〈ともにDIOR HOMME/ クリスチャン ディオール ℡0120-02-1947〉
福山と「BL」?

吉田 今日の取材はもちろん映画『三度目の殺人』の話も含めてなんですけど、福山さんには10年ぐらい前から『GQ』には出ていただいていて……。

福山 それなのに毎年『GQ』のメン・オブ・ザ・イヤーには選んでいただけないんです(笑)。

吉田 いやいやいや……!

福山 『SPA!』さんには毎年選んでもらってるのに。やはり僕じゃダメなのか……。

吉田 何が足りないのかを教えて欲しい(笑)。今回は、ずっとイメージが変わらない福山さんに自分らしさについて話して欲しいってことなんですけど、最近はBL(ボーイズラブ)のイメージもついたじゃないですか。

福山 ついてはいないと思いますよ(笑)。ただ、いまの時代って何か話題が走り出したときに、その話題がなんで走ったのかっていうことを検証してくれる人があまりいないんで、こっちがなんで走ったかを毎回説明していかなきゃいけないんですよね。

吉田 「ラジオ番組のこういう流れでBLに触れたんですよ」って説明もなく、福山雅治が突然BLにかぶれた、みたいな報道になっちゃうわけですよね。

福山 そうです。BLドラマに出たい人になってますからね。

吉田 でも、BLも読んではいるんですよね?

福山 もちろん読みました。BLファンの方に胸を張って「俺は読み込んでるぞ」と言えるほどでは全然ないですが、スタッフにリサーチしてもらって、それを読ませていただいてるという感じですね。

吉田 やっぱり、そういう福山さんの全方位で研究熱心なスタイルは変わってないと思うんですよね。

福山 あ、豪さん(聞き手)と氏神一番さん(カブキロックス)のトークも見ましたよ!

吉田 なんでそんなのまでチェックしてるんですか!

カブキロックスの氏神一番さんがデビュー前の福山さんに命を救われたことがあるって話ですよね。

福山 そうです。ホントに会ってるんですよ。

吉田 氏神さんが泥酔して渋谷のゴミ捨て場に捨てられてゲロ吐いてたら、福山さんが助けてくれて一緒に飲んだ。あのままだったらカラスに目をつつかれて失明してたかもしれないっていう話でしたけど。

エゴサーチやってます

福山 僕の記憶では、渋谷の居酒屋で僕が当時一緒にバイトしてた男友達とナンパした女の子と4〜5人で飲んでたんですよ。そしたら突然そこに割って入ってきた人がいたんです。その人が氏神さん。「僕ね、カブキロックスというバンドをやっていて、そこのボーカルの氏神なんだけど一緒に飲んでいい?」って話だったって僕は記憶してるんです。

吉田 つまり、そこにいた女の子に寄ってきただけ?

福山 じゃないですかね? 氏神さんはひとりだったんですけど、「カブキロックスさんですか。僕もじつは同じレコード会社のBMGビクターから今度デビューするんです」って言って飲み始めて。そのあと氏神さんがおっしゃるようにゴミ捨て場で寝ちゃったかどうかは覚えてないんですけど、朝まで飲んでたのは確かです。

吉田 ただし、氏神さんの命を救った記憶はない。

福山 ないです。でもいい話なんでそのままにしておきたいなって思ってるんですよ(笑)。

吉田 しかし、ホントに相変わらずのチェックぶりですよね。

福山 いまはスマホもありますからね。家だけで情報と接触してるわけでもないんで、気がついたらなんとなく見てますし、エゴサーチも日常的にやってます。

吉田 この知名度で日常的にエゴサーチを?

福山 してる人多いと思いますよ。

吉田 するんでしょうけど(笑)。書かれる量も全然違うだろうし、ダメージも受けると思うんですよ。

福山 ダメージがまったくないとは言えないですけど、この人に言われるんだったら納得だなみたいなダメージの受け方ですよね。この人にいわれても別にとか、書く人によります。

吉田 人の発言もチェックしてますよね。『SCOOP!』の大根仁監督との初対面の第一声も「僕の悪口を言ってるのは知ってますけど、才能がある人に言われると傷つきます」だったみたいだし(笑)。リリーさんと仲良くなったきっかけも、リリーさんがラジオで福山さんを話題に出したら、福山さんがアクション起こしたのが最初だったんですよね。

福山 たまたま僕がスタジオの帰りにリリーさんがやられていた『TR2』というラジオを聴いてたら名前が出てきて、そりゃもう行かなきゃって。うれしいじゃないですか。誉められたり好意を持たれてたらもちろんうれしいですけど、そうじゃなかったとしても。だからその人に才能があるなとか、この人の作風は好きだなと思ってる人の意識のなかに自分のことがあるっていうのは、それが多少悪口であったとしてもそんなに嫌な気はしないんですよ。

"人間はひと皮めくると何を考えてるのかわかんないというものなんですよ"

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インタビュー対処法

吉田 実際、ここ最近は福山さんに批判的だったような人が「福山雅治恐るべし」的なことを言うようになってきたと思うんですよ。インタビューの聞き手にしても吉田豪、九龍ジョー、武田砂鉄を指名して、「今年は杉作J太郎なんだ!」みたいな。

福山 そうなると僕も指名させていただくプレッシャーも感じてくるわけですよ(笑)。純粋に会いたい人に会っていたんですけど、そういうふうに評価してくださるから、ワインのパーカーポイントじゃないですけど、指名させていただくことのプレッシャーも感じてきてるんですよね(笑)。まあ、それはそれでうれしいプレッシャーではあるんですけども。豪さんは僕が出会った頃の豪さんより有名になられて。

吉田 福山さんに言われる筋合いはないですよ!

福山 遠い存在になっちゃって、「え、豪さん俺たちを置いて行くの? 俺たちだけの豪さんじゃなくなっちゃう!」みたいな気持ちですよ(笑)。そういうファン心理って僕はずっとありますよ。僕のなかで、ここ4〜5年で遠くなっちゃってちょっと寂しいなと思うふたりが豪さんとバカリズムさんですからね。

吉田 福山さんが、自分がその位置にいながらもそういう感情を抱いてるのはおもしろいですけどね。

福山 この感情って消えなくないですか? だからアイドルの子が女優になるとか、グラビアの子が女優になるっていうことに対しては、いまだにちょっとなんかあるんですよ。「女優じゃなくたっていいじゃん!」みたいなのが(笑)。

吉田 俳優をやっている人がそれを言う(笑)。

福山 本当に余計な御世話ですよね(笑)。「女優になるためにいまはグラビアをやってます」みたいなのを感じると、「頑張ってほしい。でも無理はしないで欲しい。今の君で十分素敵だよ!」って、一番足を引っ張るファン心理ですが(笑)。でも、そのファン心理の部分はあんまり変わってないです。

吉田 そのスピリットは永遠に忘れないってことですね。自分はバンドで成功しようと思って上京して俳優になって……みたいな流れは置いといて。

福山 自分のことはまったく見えてないんですよ、そこのセルフプロデュースはまったくできてない(笑)。

吉田 ちなみに福山さんと知り合って以降、リリーさんが役者として活躍しているのはどう見てます?

福山 うらやましいです。だってこんなに短期間でヨーロッパの三大映画祭に全部行った人ってリリーさんぐらいしか日本の俳優さんではいないんじゃないですかね。あんなに引く手あまたで、CMもたくさん出て、ちょっと遠い人になった寂しさもうっすらあるんですよ(笑)。僕の知らないところでお芝居やって、僕の知らない共演者の方々と談笑しているんだって思うと、こう、寂しさが。……そろそろ映画の話をしたほうがいいですよね?

吉田 はい! ホントにおもしろい映画でした。

(c) 2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ。
『三度目の殺人』を解説すると

福山 ありがとうございます。この作品、途中から誰もが怪しく見えてきて、最後どこにたどり着くのかと思ったら、そこだったのか! と。でもただ犯人探しをする映画ではありません。人間はひと皮めくると何を考えてるのかわかんないということを、文学的かつエンターテイメントとして描いています。例えば、僕をいつも助けてくれるスタッフも、ひと皮むくとものすごく僕の悪口を言ってるかもしれない。僕の悪口を2ちゃんねるとかに書いてるかもしれない(笑)、誰が本当のことを言ってるかわからない。人の皮をかぶってるけど、ひと皮むくとみんな凶暴な獣なんじゃないか? そんなふうに重盛(役名)の目線を通じて、きっと観客のみなさんもこの物語に翻弄されるのではないでしょうか。自分の目に見えてるものや信じてたものが、ちょっとしたダメージで、考え方の根幹を崩される。信念をちょっと膝カックンされただけで人間はこんなに精神が崩れ落ちちゃうのかって、観客のみなさんも、豪さんもそういうふうになってくれてたら僕の思う壺なんですけどね(笑)。

『三度目の殺人』
カンヌ国際映画祭・審査員賞受賞から全世界へと広がった『そして父になる』の熱狂から4年─。是枝裕和監督×福山雅治主演というタッグに加え、名優・役所広司が是枝組に初参加。第74回ベネチア国際映画祭に正式出品することが決定した。9月9日(土)より全国ロードショー。©2017フジテレビジョン アミューズ ギャガ。

福山雅治 ミュージシャン/俳優
1969年2月6日生まれ、長崎県出身。ミュージシャン、俳優、ラジオパーソナリティ、写真家など幅広く活躍する。9月13日(水)には32枚目のCDシングル「聖域」が発売予定。2018年公開予定の主演映画、ジョン・ウー監督『追捕』のベネチア国際映画祭正式出品が決定した。